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漢タロウ薬局 8月の健康コラム
薬剤師:斎藤まゆみ 〜 山形の風物 「いも煮会」〜
8月は陰暦で7月です。文月とも申します。7日か8日ごろにはもう立秋になります。しかし、まだまだ残暑は厳しいですね。それでも旧のお盆が過ぎるころ、空の色が変わり、虫の音がふと心に留まることがあります。明け方、気温がさがり肌寒く感じたりもします。暑さに慣れた身体にはこたえます。
秋風は身をわけてしも吹なくに 人の心のそらになるらむ
古今和歌集 巻ノ十五 とものり
"暑さはいつまでも続くわけでもなく、知らぬまに季節はめぐって行きます。"
そうですね。でも今を生きている私たちは、平安のいにしえの人々より、季節の移ろいには鈍感かもしれません。
生活環境を人工的に制御し、快適さをはきちがえ、食べ物ですら一年中同じように摂取しています。昔は自然や季節ごとに対処する知恵が豊かで、その分、楽しみも多かったと思いますが、今の生活はどうでしょう?
春夏秋冬。そのメリハリが薄れ、意識と体感が大きくずれてしまって、ちょっとしたことで不調を感じたりします。充分注意したいところです。
ここ山形では、秋になると「いも煮会」を行います。家族や気の合ったグループで鍋や蒔をかかえ、川原で火をおこし、里芋・山形牛・ネギ・コンニャクを醤油味の汁に仕立てて食します。野趣あふれる山形の秋の行事です。大人も子供もそれはそれは楽しみにしています。
この「いも煮」というお料理を、漢方の食医の観点からお話させて頂きますと、先人の大いなる知恵が隠されているように思えます。
暑さが厳しい夏は、当然「冷え」の野菜が中心でしたが、お盆を過ぎたころから山形近辺では、里芋などの収穫が始まります。里芋は夏の「冷え」の野菜類とは対照的な「温」の根菜といえます。
ここで簡単に「温」の食材 を分類して見ましょう。
分 類 |
食 材 |
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里芋、薩摩芋、ネギ、タマネギ、生姜、ニンニク、
ニラ、かぼちゃ、人参、ゴボウ |
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牛、豚、鳥、羊 |
「いも煮」はまさに「温」の食材を使用した、郷土色豊かなお料理といえますね。つまり、夏の「冷え」の食材にならされた身体に、季節の移ろいを知らせる「温」の食材を入れて、これからしだいに寒さに向かうための身体の準備を促しているのです。コンニャクは、食物繊維が多く含まれ、夏に疲れがたまった胃腸をきれいに掃除して、リフレッシュしてくれるという効果が期待できるでしょう。
●「里芋の健康効果」
里芋(さといも)の主な成分はでんぷんですが、比較的水分が多いため芋類の中では低カロリーです。里芋独特のぬめりは、水溶性食物繊維です。これはガラクタン(寒天質)とムチン(ネバネバ質)からなり、炭水化物とたんぱく質が結合してできています。
ガラクタン(寒天質)は、脳細胞を活性化させ痴呆やボケを予防する効果があり、免疫性も高め、がんの発生・進行を防ぎ、風邪の予防にも働く成分です。
さらに消化を促進する作用もあり、整腸と便秘の解消に大変効果あります。 ムチン(ネバネバ質)は、体内に入るとグルクロ酸に変化し、胃や腸壁の潰瘍を予防し肝臓を強化する働きがあり、たんぱく質の消化吸収を助ける作用や、滋養強壮作用もあります。
また里芋には、体内の余分なナトリウム(塩分)を排出し、高血圧やむくみを防ぐカリウム、糖質の分解を助けるビタミンB1、便通を促し、体内のコレステロールや毒素を排泄する食物繊維などが豊富に含まれているのです。
胃腸の調子を整え、食欲も増進させる効果もある低カロリーの里芋は、便秘で悩む方、ダイエットしたい方、健康を気遣う人にお勧めの食材です。
■里芋の栄養素(食材100g当たり)
関連記事1: 毎年9月の第1日曜日に山形市の馬見ヶ崎河川敷で行われている
「日本一のいも煮会フェスティバル」山形商工会議所青年部が音頭をとり平成元年に始めたイベントで、今年で17回を数えます。
6mの大鍋に里芋3トン、牛肉1.2トン、コンニャク3,500枚、ネギ3,500本、味付けの醤油700リットル、隠し味に日本酒50升、砂糖200kg、そして水6トンを入れ、6トンの薪(ナラ材)で煮炊きする、おいしさもスケールもまさに日本一なのです。
関連記事2:
山形はコンニャク消費量日本一といわれています。県内の観光地にはたいがい、里芋の煮っころがしのように見える玉コンニャクのおでん風を串に刺して売られています。湯気が立つアツアツのコンニャクに辛子を付けて食せば、寒さが厳しい山形の冬も無事に乗り切れます。
●「いも煮」簡単レシピ
材料:里芋・牛肉(薄切り)・ネギ・コンニャク 手順:
- 水洗いした里芋の皮をむき、一口サイズに切ります。
- 牛肉を食べやすい大きさに切ります。
- コンニャクを食べやすい大きさに手でちぎります。
- 鍋に里芋、コンニャク、水と醤油(約1/2の分量)を加え、里芋が柔らかくなるまで中火で煮ます。(お好みにより、季節の野菜類をいれてもOK)
- 牛肉、お酒、砂糖、残りの醤油を加え、あくをとりながら味を整えます。
- 最後にネギを入れ、火が通れば出来上がり。
注意:
大き目のどんぶりでフゥーフゥー言いながら食します。ほっぺたが落ちてしまうかもしれませんので、ご注意願います。(笑)
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